
2アウトからが本番
皆さん野球は好きでしょうか?
日本では国民的スポーツとして大人気の野球ですが、個人的には運動音痴なのにもかかわらず、社会人1年目で入社した会社の野球部に人数合わせのため無理やり入れられて以来、野球とは距離を置いた人生を送ってきました(遠い目)。
そんな私の冷めた心を溶かすような熱い人生大逆転ホームラン映画が今回感想を書く『コート・スティーリング』です。
監督は『レスラー』や『ブラック・スワン』などのダーレン・アロノフスキー監督。今作は彼のフィルモグラフィの中でほとんど初めてのアクション映画で、しかもかなりエンタメ度の高い映画かつ近作の『ザ・ホエール』や『マザー!』とも違った毛色の映画になっていてかなり楽しめました。
今作の舞台は90年代のニューヨークのかなり広範囲を舞台にして銃撃戦あり、カーチェイスありで、コロナ禍で撮影が制限されていた中でのワンシチュエーション物の『ザ・ホエール』とは打って変わって当時の街並みや観光スポット的な風景も存分に映り込んでいて、観光映画的な楽しみ方も出来てよかったです。野球好きで当時の野球の試合の展開なんかも分かるともっと楽しめるのかもですね。
野球をテーマにしている以外はジャンル映画的にオーソドックスな展開だと思うのですが、しっかりダーレン・アロノフスキー味もあります。
彼の映画の主人公は身体的にも精神的にも極度に追い詰められる描写が多いのですが、今作のオースティン・バトラー演じるハンク・トンプソンも序盤でマフィアの男2人に痛めつけられ、腎臓を摘出する羽目になります。アルコールに弱くなり鍵の在り処を忘れて、その結果ガールフレンドであるゾーイ・クラヴィッツ演じるイヴォンヌを含め周りの人間を死なせてしまいます。
過去のチームメイトを死なせた交通事故も合わせてまさに2アウト状態。どちらも自分の飲酒が原因とはいえ、自責の念に駆られて精神的に追い詰められているハンクにオースティン・バトラーの演技も良くてかなり感情移入してしまいました。だからこそ終盤、攻守交替し賭けに出るハンクが豪快にバッティングするシーンはぶち上がりましたね。
一方コメディ的なシーンは、アクションに比べると意外と薄味というかなんというか・・・。せっかく猫が名演技(?)を見せているのに演出が淡白なんですよね。
オースティン・バトラーも文字通り体を張って全裸になっているのに、あんまり振りやタメが効いていないのでちょっともったいなかったです。
猫以外も無事です
アロノフスキー監督は映画を通してユダヤ・キリスト教的な精神や魂の救済を頻繁に描いてきましたが、作品によってはその考え方が独善的であったり、問題を矮小化していたりする所があって個人的には苦手な映画も多いです。特に『ブラック・スワン』はスリラーやボディホラー的な面白さはありつつも、芸能社会の男性優位の権力構造や夢という名の呪いへの批判的視点が足りないと思っていて、単純に見ていて辛さの方が前に立つ映画でした。
『コート・スティーリング』はその点社会的テーマも希薄ですし、終わり方もエンタメ的直球大逆転サヨナラホームランで気持ちよくカタルシスを得られて良かったです。この作品のテイストで主人公が最後死んだら非難轟々だろうな・・・。
猫も最終的には無事でしたし、終わってみればトカゲや牛含め動物は一切死んでいないので動物好きにとってもストレスフリーな映画でした。『ノア 約束の舟』なんていう映画も撮っているぐらいですから、アロノフスキー監督は案外動物好きなのかも。
以上、『コート・スティーリング』感想でした。
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